糸芭蕉の木
芭蕉の木には糸芭蕉の他に花芭蕉、実芭蕉(バナナ)があり、マニラ麻によく似た木で鹿児島県本土から奄美大島以南にかけて多く自生しています。
織物の繊維として優れる糸芭蕉は古くから沖縄や奄美群島で芭蕉布として利用されてきました。
「奄美糸芭蕉紬」はこの糸芭蕉と絹の繊維から紡いだ糸で織上げています。
糸芭蕉解繊作業
50cmほどに切り分けた糸芭蕉の幹を発酵させた後、不要な部分は洗い落として繊維質だけを取り出します。
糸作りの中で最も手間と時間を要する工程です。
糸芭蕉から取れた繊維
糸芭蕉の繊維は強い張りのある軽くて丈夫な繊維です。
芭蕉と絹の繊維を紡いだ糸
芭蕉繊維の綿と絹繊維の綿を合わせて紡いだ糸は毛羽や節が多く扱いに気を使いますが、とても特徴的な風合いです。
手織り
毛羽や節が多い糸を経糸(たていと)に使うと糸さばきが悪く綜絖を切替えるたびに引っかかります。
通常織物の経糸には糸切れなどの事故リスクを減らすために平滑で丈夫な糸を使いますが、あえて風合いを優先して根気強い大島紬の織工さんに織ってもらっています。織工さんには苦労をかけますが他にない生地が織り上がります。
鹿児島の自然を生かした草木染め
離島を含めた南北に長い鹿児島県は気候や環境も幅広く、豊富な自然を持っています。糸芭蕉紬は主にこの鹿児島に育つ草木を使って染色を行っています。
奄美大島の泥染めや福木染め(金井染色工芸)、屋久杉工芸の廃材を利用した屋久杉染め、大島紬の正藍染め、琉球藍を使用した紅藍染め(特許登録第4660640号)等により、糸染めや生地染めを行っています。